認知症を治そう~正常圧水頭症

正常圧水頭症(iNPH)って何?

正常圧水頭症(iNPH)は、脳脊髄液が過剰に蓄積することで発生する病態であり、歩行障害認知機能の低下尿失禁といった症状が特徴的です。これらの症状は高齢者に多く見られるため、しばしば加齢に伴う変化と誤解されがちであり、その結果、適切な診断や治療が遅れることがあります。
日本では、正常圧水頭症の有病率は高齢者人口の約1.1%と推定されており、多くの患者さんが適切な診断や治療を受けられていない可能性が指摘されています。このため、正常圧水頭症に対する認識の向上と、症状に気づいた際の早期受診が強く推奨されています。

正常圧水頭症の早期発見と治療の重要性

正常圧水頭症の診断と治療は、早期発見が鍵となります。歩行障害や認知機能の低下、尿失禁などの症状が見られた場合、脳神経外科や神経内科などの専門の医療機関での詳細な検査が推奨されます。CTやMRIによる画像診断、髄液タップテストなどが診断に用いられ、症状の改善を目指した治療が行われます。特に、シャント術と呼ばれる手術は、脳脊髄液の過剰な蓄積を解消し、症状の改善に寄与することが報告されています。、改善率は約90%と報告されています。これは、患者本人だけでなく、介護者の生活や介護にかかる費用にも大きな影響を与えることから、正常圧水頭症(iNPH)の早期発見と治療は非常に重要です。

正常圧水頭症(iNPH)の主な症状は以下のものがあります

歩行障害(発生率94~100%)には、小刻み歩行(小股で歩く)、開脚歩行(足を少し開いて歩く)、すり足歩行(足が上がらずに地面をすりながら歩く)、第一歩が出ない(歩き出せない、足がすくむ)、不安定さによる転倒(特にUターン時)が含まれます。
認知機能の低下(発生率78~98%)は、自発性の低下、集中力や作業速度の低下、記憶力障害を引き起こし、物忘れ一日中ぼんやりする、日常の活動や趣味への関心喪失テレビや新聞への興味喪失呼びかけに対する反応の遅れ表情の硬直化などが見られます。
排尿障害(発生率76~83%)としては、頻尿(トイレが近い)、尿意切迫(我慢ができない)、尿失禁があり、これらは介護現場でよく見られる症状です。

一見するとパーキンソン病やアルツハイマー病の症状と似ています。


正常圧水頭症(iNPH)に関する啓発と支援の重要性

正常圧水頭症(iNPH)は、適切な治療により改善が見込める認知症の一種です。この疾患は、脳内の脳脊髄液の流れが正常でないことによって引き起こされ、歩行障害、認知機能の低下、尿失禁などの症状を引き起こすことがあります。正常圧水頭症(iNPH)の早期発見と治療は、患者の生活の質(QOL)を大幅に向上させる可能性があります

医療従事者や一般の人々に対する教育と啓発は、この疾患に対する認識を高め、早期に適切な診断と治療を受けることができるようにするために不可欠です。iNPHの診療ガイドラインは、診断基準や治療アルゴリズムを提供し、医療従事者だけでなく、一般の方々にも正常圧水頭症(iNPH)についての理解を深めるための重要なリソースとなっています。

社会全体での理解と支援が求められる正常圧水頭症(iNPH)について、疑わしい症状がある場合は専門医の診断を受け、必要な情報や支援を医療機関や専門の支援団体から得ることで、さらなる理解と対応が患者さんやその家族にとって大きな一歩となるでしょう。
正常圧水頭症の早期発見と治療の重要性を広く伝え、適切な対応ができる社会を目指しましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次